疼痛に対する理学療法における臨床判断の考え方1
〇はじめに
理学療法を行う上で必ず出くわす機能障害として疼痛があります。
この疼痛があると厄介で私の働く回復期で言えば機能訓練、動作訓練の妨げになります。
そんな疼痛に対する考え方をまとめました。
〇定義
疼痛は「実質的または潜在的な組織損傷に結びつく、あるいはそのような損傷を表す言葉を使って表現される不快な感覚・情動体験」と定義されています(国際疼痛学会IASP)
この定義は疼痛が、組織損傷に起因する「急性痛」、損傷との対応が見いだせない「慢性痛」に分類されます。
要するに怪我や手術により皮膚や筋肉などを切ったりすることで組織を損傷する痛みが「急性痛」で、その組織の障害が治癒するのに十分な時間が経過したにも関わらず持続する痛みのことを「慢性痛」となります。
ではなぜ慢性痛は痛いのでしょうか。
そこで考えなくてはならないのが疼痛は「感覚」だけではなく、「情動」や「認知」を含めて考えなくてはならないということです。
〇疼痛の分類
疼痛はその原因により①侵害受容性疼痛、②神経障害性疼痛、③非器質的疼痛に分類されます。
①侵害受容性疼痛は炎症や組織損傷によって生じた発痛物質が抹消の侵害受容器を刺激し生じる痛みで最も一般的な痛みです。
②神経障害性疼痛は体性感覚神経に対する損傷や疾病によって引き起こされる痛みで異常感覚や灼熱感、幻肢痛などが代表例です。
③非器質的疼痛は器質的病変がないにも関わらず訴えられる痛みや、十分に説明しえない痛みのことです。
〇疼痛治療
上記の分類のように疼痛は侵害受容性疼痛・神経障害性疼痛のような器質的な疼痛だけでは説明がつかない場合も臨床では多くみられます。
かならず器質的な原因があるわけではありません。
慢性痛では尚更です。
慢性痛は情動面、認知面、社会面など多岐にわたる理由が混在しています。
その為、疼痛を疾患名から判断せず、多面的・包括的なアプローチが必要となります。
患者によっては「ベッドから起きたくない」という気持ちを無自覚に「痛い」という言葉で不安を表しているかもしれません。
また「痛い」という言葉を発することでセラピストが親身に接してくれることを無自覚に理解し、疼痛を誘発しているかもしれません。
〇まとめ
まずは「急性痛」なのか「慢性痛」なのかの判断が大切。
急性痛ならば原因に沿った対応を。
慢性痛ならば視野を広く。なぜ「痛い」という言葉を使っているのかを考える必要がある。