歩行の安定性の戦略として必要な2つの制御とは
前回の記事では転倒予防には身体機能が大切であるが、注意機能障害を含む高次脳機能障害の影響が必要だということを書きました。
これはどのような患者が転びやすいか、実際前向き研究で転んだかを予測する時に役立ちます。
では今度は患者個人に焦点を当てた時に「転ぶとはどういうことなのか」について書きます。
2つのバランス制御
1つは視覚・聴覚・体性感覚等の感覚情報から無意識下で制御する方法
2つ目は1つ目でエラーが起き、支持基底面外に圧中心(COP)が逸脱してしまい立ち直り反応やステップ反応にて修正する方法
の2つに分けられます。
人間は歩行時に意図的に足がすらないように股関節を屈曲して歩こうなんて考えていません。
大脳皮質以下でほとんど制御されています。
例えば道路に若干の傾斜がある場合にはロボットのように進んでいれば容易にCOPが支持基底面から離れてしまいます。
しかし事前に視覚等の感覚情報が入ることで筋緊張を調整しCOPが支持基底面から離れないように制御されます。
たまにその先行的な予測と運動に誤差が生じエラーを起こすことがあります。
健常人でも階段から降りたと思っていたらもう一段あって転びそうになることがあります。
これがエラーです。
その時には転ばないようにと新たに支持基底面を作るか、カウンターウエイトや立ち直りを使用しどうにかバランスを保とうとします。
患者によりどのような要素で転倒しやすいかを識別することで今後の介入内容に応用できます
「ふらつきやすいけど、どうにか歩ける人」なのか
「ふらつかないけど、一度バランスを崩すと立て直せない人」なのか
くも膜下出血にみられるように身体機能が高く高次脳機能障害が中心となるような患者は1つ目のエラーが多いです。
このような場合にはもちろん注意機能の改善が必要ですが、ふらつきても立て直す能力を抜群に高めるというのも方法かもしれませんね。